父のテストピース

今はなき名古屋工業技術試験所(現在は、国立研究開発法人産業技術総合研究所 中部センターに組織再編)で陶芸の基礎を学んだ父・岩井孝道のテストピースは、父が廃業を決めて、片付けをした時にその多くを処分してしまったのですが、どういうわけか残したいと私の弟(当時22歳くらい)が選んで段ボールに箱詰めしていたものがいくつか残っています。

彼がどういう基準で選んだか、全く適当かも知れないのですが、メロンの灰を使った磁器の試験の初期のもので父が自ら行ったもの(1992年ころ)、その後少し経ったもので父の指示で、私が大学生のころ、アルバイトで行い、ゼーゲル式を使って電卓をたたいてモル数を計算し、原料を調合した試験(1995年)、弟が同じくアルバイトや学校の自由研究で行ったメロン灰青白磁の試験(2006年ころ)など、不思議と参考になるものが残っています。

1992.7.8 無貫入灰釉 岩井孝道
調合割合
1995年ころ、磁器土でのりんご灰釉試験 父の指示のもと計算・調合・施釉
調合割合
メロン灰青白磁の完成 父の指導で弟が試験

色の変化も綺麗なので、うまくディスプレイしたいなと思っていますが、試験としての成果を残したままうまくディスプレイする方法を探したいと思っています。

付記、弟と私は釉薬の試験をしていますが、間にいる妹は、違うタイプで、友達をたくさん連れてきて、当時父が進めていたメロン灰づくり(特に一番大変な灰を細かく篩う作業など)に貢献していました。なかなか一人でできることではありません。

そして、父の後年のプランには、メロン灰の白磁というものもあったよう。実現には至りませんでしたが、無限の組合せから、どれを採用するか、それが次の釉試験の原動力なのかな、と思います。

私のささやかな野望としては、微妙な発色の変化に影響を与える植物灰を構成する酸化物について考察できたらと。

メロン灰の基礎試験

天草陶石を使ったメロン灰青白磁の基礎試験を始めました。ベースは、天草陶石(九州産の磁器土)と比較材料として、今、りんご灰釉で使っている信楽系の新特こし土の2種。

第1回目の試験は、長石と灰の共融点(釉薬がよく熔けている試験片)を見つけるのが目的です。5%刻みで調合した釉薬を乳鉢に入れ、少なめの水を入れてよく擦り混ぜてから、濃度を調整し、磁器土と陶土のテストピースに付けます。

テストピースは、素焼き後、水拭きし、焼成後に区別できるように、裏面に番号を付します。その後、下部や側面に釉薬が付かないように撥水剤を予め塗っておきます。

180目の篩で篩った昔のメロン灰
ナンバリングして、撥水したテストピース。左側が陶土、右側が磁器土。同じ釉薬でも染み込み具合が異なる。
計測中。メロン灰がグレー、長石が白
乳鉢でよく擦り混ぜる
テストピースを乳鉢に入れ、施釉

この後、比較テストとして、りんご灰でも同じ試験を行い、焼成後、試験の結果を見て、次の段階に進んで行く予定です。

次回以降の試算

紺屋灰の釉試験

昨年いただいて精製処理をした紺屋灰を4月初旬にやっと篩い終わったところ、全部で24.3kgになりました。灰は軽いので、まあまあな量です。ところが、水簸の時から気づいていたのですが、明らかに半分くらい色の違う灰があり、気になっていました。

もともと鰹節を燻すのに使った後、藍染のために使い、その後私のところにやってくるという流れなので、どういう理由で灰の色が異なるのかはよくわかりません。

ただ、この色の違いが釉薬にした時にどう現れてくるのかは確認しておいた方よさそうです。

幸いにして、窯のスタートまでまだ時間があるし、テストピースが2つ入る窯のスペースをなんとか作って今回試験してみることにしました。

白っぽい灰。白い粉は長石です。
かなり濃い色の灰。
乳鉢で摺ってテストピースに掛けて乾燥したところ。明らかに色が違います。

わら灰釉の試験

次回の窯焚きで焼成する澱青(でんせい)という釉薬は、父が20年以上前に調合したと思われるもので、残り50リットルくらいしかないので、その後に使える釉薬の試験を同時に行う予定です。

昔の記憶を辿ってもらいながら、りんご灰、わら灰、長石を使って14パターンの試験をすることになりました。

今回、テストピースの焼成が間に合わず、まずは7パターンを。

どんな結果になるか楽しみです。

釉薬の厚さをなるべく一定にしながら、施釉していきます

夏から秋へ

立秋を境に明らかに朝の目覚めが悪くなってきました。そして、日の入りも早くなってきて、10月を前にストーブをつけてしまう日も。

次の窯は、今まで焚いたことのない澱青(でんせい)という釉薬とその後継となる釉薬の試験をするということで、毎回窯焚きは緊張するのですが、また少し違う緊張感があります。

釉薬のテストピース

今週の秋空